WindFoiling

ウィンドサーフィンとフォイルに関するブログです。

2024年春の逗子試乗会特集編 復活のノース3Dセイルはどんな感じ?

はじめに
復活のノースセイルに試乗してみました。このセイルは従来の1m程のパネルを縫い合わせて作るセイルと異なり、20cmくらいの幅のケブラーテープを3次元の型の上で張り合わせて作る3Dセイルです。

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レースセイルですがカムがありません。ウィングのようにエアバッグをスリーブの中に搭載していて、ポンプで膨らませませてカムの代わりにしています。エアカムと言うそうです。カムが無いので簡単にマストが通せます。でもポンプが別途必要になります。
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パネルには縫い目もありません。これの何が良いかと言うと軽量になるのはもちろんですが、水切れがとても良いそうです。パネルのテープも撥水なのでとても早く乾くのだとか。
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このセイルで柔らかい所といったら、透明パネルのPVC(塩ビ)の部分のみです。ここは縫い付けられています。f:id:nakarobo:20240524100942j:image

バテンポケットにも縫い目がありません。
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WAVEはマストスリーブ(黒)は普通の素材で3Dパネル(白)の境に縫い目があります。
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RACEはスリーブも一体整形です。とても水切れが良いそうです。
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カムが無くてもバテンが途中から二股に分かれていて(スプリットバテンと言う)セイルの裏側(凹んでいる方)にもキレイに風が流れる構造になっています。ほんとはセイルの裏側の方が重要なので、これはとても効率が良さそうです。
材質について
KIYOさんによると、アラミド繊維(製品名だったら防弾チョッキに使われるケブラーの方が有名ですね。)のテープを張り合わせて作ってあるので、針やカッターナイフのような人工物で無い限り基本的には破れたり穴が空いたりすることはないそうです。
それでもアラミド繊維の欠点は紫外線に弱いのと塩素に弱いこと(といっても15年くらいは大丈夫なはず)なので、炎天下に出しっぱなしだったり、水道水につけっぱなしにしない方がよさそうです。

持った感じ
とても軽いです。例えば僕の2020年モデルのGA IQ5.6の重さは3.4Kg(2024年モデルは3.36Kg)ですが、ノースのWAVEの5.6は2.8Kgしかありません。重さで言うとあまり違いが無いように思えますが、比率で言うと21%(つまり8割)の重量しかありません。

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試乗
セイル全体にテンションがかかっていて張りがある感じでした。海上ではたしかにスムーズに風が流れるのが分かります。上がテロテロした今どきのセイルに慣れていると少し違和感があります。平らな伸びないフィルムをつなぎ合わせた普通のセイルとは明らかに違う感覚があります。そう太鼓のようなパンと全体が張った感じです。普通のセイルでもアウトを強く引くと同じようなパンと張った感じにはなりますが、形状は少し崩れてしまいます。ノースの場合はアウトをそんなに引かなくても張りがあってきれいにパネル全体にテンションがかかっている感じです。
そして海上でもとても軽いです。セイルを落としてもエアバッグのおかげでセイルアップもらくらくです。加えてカムがないのでセイル返しもらくらくです。3Dパネルと言えど、フットには少しシワが寄っていますが、少し風が入れば一枚のキレイなパネルになります。
問題は値段か
ページを見るとセイルの値段はちょっと高めで、20万から30万円程になります。

kiyo.jp

マストは標準径でもRDMでも使えるそうですが、純正はMDMと言う中間径のものになるのでセイルと一緒にマストも買うと、40〜45万円程します。

弱点はないのか
このセイルの弱点をあえてみつけるとすると
・適正風域を超えた場合に風が抜けない。
普通のセイルなら適正風域を超えるとフォイルが崩れてしまいますが、なんとか乗れますが、つねにセイルの形状がでてしまうので風が抜けないと思います。
・フリースタイルセイルがない
風を抜くとフラットになるようなセイルがラインナップにありません。Waveセイルが代用できるかもしれませんが、3D製法とフリースタイルセイルに求められる特徴とが合わないのかもしれません。
・透明ウィンドウ部分が曇る
PVCは経年変化で白く曇ってきたり、変色(色移り)したりします。白く曇った場合は天日干しすればまた透明に戻りますが、変色すると元には戻りません。
・マストが持てない
マストを握ることができないほどダブルラフパネルがパンパンに張っています。基本はブームTOブームでタックをして下さいと言うことなのでしょう。マストを持つ癖がついている人には注意が必要です。
まとめ
どうやら強度としてはイジーセイルを抜いて現在最強なのかもしれません。この構造だと一番最初に悪くなるのはPVCパネルか、テープを張り合わせた接着剤の部分かもしれません。普通のセイルの耐用年数が4〜5年とすると、このセイルの想定される耐用年数は10年以上あるのでは無いかと思います。2倍の値段で3倍長持ちするセイルのようです。
ただ、丈夫なのは良いのですが、長年型が固定なのが良いのかということです。10年前のセイルでもキレイに保管されていればちゃんと乗れますが、形状は少しづつですが進化しています。10年も経つとその間に空力が進化していて、体感できるようになりますが、それを楽しめないというのはあると思います。
一生ものと思えば安いのかもしれませんし、とても軽くて丈夫なので、セイルの扱いがどうしても雑になってきて、強風域でも乗ろうとしてセイルを破ってしまう中級者のメインセイル(寿命が3年くらいになっちゃう)に良いのかもしれません。
おわりに
いろいろな新しいコンセプトが満杯のセイルになっています。微風域での試乗だったので、こんなにパンパンに張ったセイルで、強風域でキレイに風が流せるのかは確認できていません。または今後のレースでの活躍が気になるところです。レースで勝てるセイルならこのセイルのコンセプトが他のメーカにも広がることでしょう。吹いた中で試乗してみたいです。
レースセイルを中心に書きましたが、他のセイルもとても軽量なので、この特徴は買ってすぐに分かると思います。
おしまい

気になったらカタログ号で
アマゾンで買うと利益が少ないそうなので、出来ればお近くの本屋さんで買ってくれると嬉しいそうです。

近くの本屋になかったらこちらから